犬に「おいで」を教える極意 ~成功の積み重ねが信頼を築く~
犬のしつけにおいて、「おいで」のコマンドは非常に重要なスキルです。しかし、それを確実に実践するためには、計画的かつ段階的な訓練が必要です。本コラムでは、30日間の実践的な訓練をもとに、「おいで」を教えるためのプロセスとポイントを解説します。
その前に少しだけ自己紹介します
NPO法人ヴァリアスカラーズの代表理事を務めさせていただいております渥美直幸と申します。
私は20代前半に犬の訓練を学び、その後ペット専門学校の講師を続けながら、犬の訓練士として家庭犬の問題行動の改善やお悩み相談などを行ってきました。これまで多くのスタッフや飼主様に支えられ、そして何より多くの犬や猫に助けられ今があります。その感謝の思いから、42歳の時にヴァリアスカラーズを立ち上げました。小さいながらも保護施設を建設し、今に至ります。
まだまだ未熟な私ではありますが、私の残りの人生で出来ることは何か?と考え、将来もっと犬や猫を取り巻く環境がクリーンな世界として残せるように、一歩一歩前進したいと思い日々活動させていただいております。
- 目 次 -
◆「おいで」を教える目的
◆基本的な考え方
◆段階的なステップアップ ~効果的に進めるための具体的な方法~
◆ドッグランや外部環境での実践 ~リアルな場面での応用力を育てる~
◆成功体験を積み重ねる重要性 ~「できた」という感覚が犬を成長させる~
◆訓練の成果と限界 ~犬ごとに異なる学習ペースを理解する~
◆今後のアプローチ ~訓練を日常生活に活かす~
◆今回の記事のまとめ 【犬に「おいで」を教える極意 ~成功の積み重ねが信頼を築く~】
◆「おいで」を教える目的
犬に「おいで」を教える目的 ~信頼と安全を築くために~
「おいで」を教えることは、単に飼い主の元へ犬を呼び戻す行為にとどまりません。誘惑物や興奮状態に左右されず、どんな状況下でも安全に呼び戻すことが最終目標です。それは、犬とのコミュニケーションを深め、信頼関係を築くための基礎となる大切なスキルな為、以下では「おいで」を教える目的をさらに掘り下げ、その重要性を詳しく解説します。
1. 犬の安全を守るため
日常生活では、犬が思わぬ危険にさらされる状況が多々あります。例えば、公園や街中で突然道路に飛び出してしまったり、他の犬や動物を追いかけてしまうこともあります。「おいで」を確実に理解することで、飼い主が危険な状況から犬を即座に安全な場所へ呼び戻すことが可能になります。これは犬自身の命を守るだけでなく、周囲の人々や動物に対するトラブルを未然に防ぐ役割も果たします。
2. 誘惑物や興奮状態に負けない対応力を身につける
犬が飼い主の指示を無視する場面の多くは、興奮状態や強い誘惑物に影響されている場合です。例えば、横切る猫やハトなど鳥、さらには魅力的な匂い、他の犬と遊ぶ楽しさが「おいで」の指示より優先されることがあります。こうした誘惑物に負けないようにするには、日々の練習を通じて「おいで」を習慣化し、犬にとっての優先順位を「飼い主の指示が第一」に再構築することが必要です。
3. 飼い主との信頼関係を深める
「おいで」を教えることは、飼い主と犬の信頼関係を構築する大きな一歩です。犬にとって、飼い主の元へ行くことが「安全で楽しい」と感じられるようになると、自然と指示に従うようになります。これにより、飼い主の言葉が犬にとって特別な意味を持つようになり、日常の中での信頼関係の基盤が形成されるでしょう。
4. 自由とコントロールのバランスをとる
犬が自由に動き回る喜びを得る一方で、飼い主のコントロールが効く状態を保つことは非常に重要です。「おいで」の指示が完璧にできる犬は、広い公園やドッグランでも自由に遊びながら、飼い主の声にいつでも反応できるため、飼い主に安心感を与えます。自由とコントロールのバランスを取ることで、犬と飼い主双方にとって充実した時間を共有できます。
5. 問題行動の予防と改善
「おいで」を教える過程では、犬の集中力や注意力を高める訓練がおのずと含まれます。この結果、日常生活における問題行動(飛びつきや無駄吠えなど)の改善につながることも多いです。また、問題行動を未然に防ぐための基礎として「おいで」を教えることは有効です。
まとめ
「おいで」を教えることは、犬の命を守り、飼い主との絆を深める最も基本的でありながら重要なスキルです。それは単なる訓練ではなく、犬と飼い主が互いに信頼し合い、協力して生活していくための第一歩と言えます。どんな状況下でも「おいで」ができる犬になるためには、時間をかけて地道に成功体験を積み重ねることが大切です。そして、その成果は犬との充実した生活の中で必ず報われるでしょう。
それでは次のご説明の中で基本的な教え方について触れていきたいと思います。
◆基本的な教え方
初期段階のポイント
最初は静かな環境で、「おいで」という指示を確実に認識させます。ここでは、犬が集中できるような工夫(例:おやつや遊び道具の利用)が大切です。また、指示に従った際には必ず褒めて(※おやつや遊び道具を与えて)成功体験を与えましょう。それでは下記に詳しくご説明いたします。
1. 静かな環境を選ぶ
初めての「おいで」の練習は、静かで刺激の少ない環境から始めます。例えば、室内やフェンスで囲まれた安全な場所が適しています。
周囲に気を散らす要素(他の犬、動く物、音など)がない環境であれば、犬は飼い主の声やしぐさに集中しやすくなります。
2. 「おいで」の言葉を確実に覚えさせる
犬が「おいで」の言葉とその意味を理解することが、訓練の基礎です。「おいで」と優しく呼びかけたら、犬がこちらに来るようにおやつや遊び道具を使用します。確実性を伸ばすために犬に紐をつけておくとよいでしょう。もし反応が薄い場合は、軽く手を叩く、しゃがむなどして犬の注意をさらに引きつける工夫をしながらも紐でそれ以上離れないように調整すべきです。言葉と動作を繰り返すことで、犬が「おいで」の合図に反応する習慣を形成します。
3. おやつや遊び道具を活用する
初期段階では、犬に「おいで」の行動を楽しいものと感じさせるために、報酬を用意します。例えばおやつ:犬が好きなフードを手に持ち、見せながら指示を出します。犬がこちらに来たらすぐに渡し、行動を強化します。
跡えば遊び道具:お気に入りのおもちゃを見せたり投げたりすることで、犬が自発的に近づく動機づけをします。
報酬は、「おいで」が成功した瞬間にタイミング良く与えることがポイントです。
4. 必ず褒める
犬が指示に従った際は、言葉や撫でる動作でたくさん褒めてあげましょう。「いい子!」「すごいね!」などの明るい声で褒める。頭や体を優しく撫でる。これにより、犬は「おいで」の行動を良い経験として記憶します。しかしながら基礎は飼い主に注意を払わせるために工夫したおやつや遊び道具を与えることがとにかく重要です。
5. 短時間で終える
犬の集中力は長時間持続しません。最初は1回あたり5~10分程度に留め、成功体験を積み重ねることを優先しましょう。これにより、犬が訓練に対してポジティブな印象を持つようになります。またこの練習をやりたい!と思わせることが重要です。
まとめ
初期段階の「おいで」の練習では、静かな環境での短いセッションとポジティブな強化が基本です。犬にとって「おいで」が楽しく、意味のある行動だと感じられるよう、成功体験を意識して訓練を進めていきましょう。この基礎がしっかりしていれば、より複雑な環境での練習にもスムーズに移行できます。
◆ 段階的なステップアップ
~効果的に進めるための具体的な方法~
「おいで」の訓練は、段階的に進めることで効果的に犬に習得させることができます。このプロセスでは、環境の難易度を徐々に高めながら、犬に新しい状況へ対応する力を育てていきます。以下では、各段階をより詳細に解説します。
1. 室内練習 ~基礎を徹底的に磨く~
~課題~ 犬が「おいで」と言われたら人間の元へ行くことを楽しいと感じる基礎を固める。
~期待される効果~ 犬が「おいで」の言葉にポジティブな印象を持ち、指示に従う基礎が確立されます。
~トレーニング方法~
静かな環境で集中させる
初期段階では、室内のような誘惑物が少ない安全な場所で練習を行います。この環境は、犬が外部刺激に邪魔されずに飼い主の指示に集中できる理想的な場です。
報酬を使ったポジティブ強化
飼い主が「おいで」と声をかけた後、犬が近づいてきたらすぐにおやつや遊び道具&褒め言葉を与えます。これにより、「おいで」の行動を楽しい経験として記憶させます。特に、犬の好きなおやつやお気に入りのおもちゃを使うと効果的です。
短時間で繰り返す
1回の練習時間は5~10分程度に抑え、犬の集中力が切れる前に終わらせることがポイントです。
2. 誘惑物を加えた練習 ~新しい挑戦を与える~
~課題~ 犬が軽い誘惑物に対しても指示を優先できるようにする。
~期待される効果~ 犬が軽い刺激や誘惑に負けず、「おいで」の指示を優先する力をつけます。
~トレーニング方法~
軽い誘惑物を用意する
小さなおもちゃ、軽い音、動きのあるものなどを犬の視界に置き、興味を引く状況を作ります。ただし、最初は刺激が強すぎないものを選びます。
指示を徹底する
犬が誘惑物に注意を向けた際、飼い主は落ち着いた声で「おいで」と呼びます。犬がこちらに来たらすぐに報酬を与えます。※おやつ、遊び道具などを与える
徐々に難易度を上げる
犬が軽い誘惑物に慣れてきたら、より強い誘惑物(例: 他の犬や動くボールなど遊び道具として使用していないものなど)を加え、指示に従わせる練習を進めます。
注意点
失敗しそうなタイミングで指示を出さないようにし、必ず成功体験を積ませることが重要です。しかしながら、このタイミングにおいても犬に紐をつけて誘惑に対して必ず呼び戻せるように工夫する必要があるでしょう。
3. 興奮状態での訓練 ~本番に近い練習~
~課題~ 犬が興奮状態でも飼い主の指示に集中できるようにする。
~期待される効果~ 日常の様々な状況でも、犬が飼い主の声に優先して反応する能力を身につけます。
~トレーニング方法~
興奮状態を意図的に作る
犬が他ご家族と遊んでいる状況や、お庭や公園など走り回り興奮している状態を作り、そのタイミングで「おいで」の指示を出します。この練習は、日常生活で遭遇しやすい状況に備えるためのものです。このようにその状況をあえて作り出して呼び戻すトレーニングを行えば行うほど実践により近く、いざという時の犬の反応は素晴らしいものとなるでしょう。
タイミングを見極める
犬が興奮し過ぎているときに指示を出すと、失敗する可能性が高まります。あまりに失敗が続くなど不安が募る場合は犬の興奮が少し落ち着き始めた瞬間や、飼い主に注意を向けたタイミングで「おいで」と声をかけるのも効果的です。このように少々成功できるように設定を下げてあげることもよいでしょう。
成功したら大げさに褒める
興奮状態で指示に従えた場合、特別なおやつや遊び道具などでしっかり褒めます。これにより、犬は「おいで」をポジティブに強化することは忘れないことです。
注意点
興奮状態での訓練は負担が大きいため、(※特に失敗が続く場合)犬の様子を見ながら無理のない範囲で行います。
~トレーニングポイント~
「おいで」の訓練は、段階的にステップアップさせることで、犬の理解を深めるだけでなく、実践力を高めることができます。基礎を室内で固め、小さな誘惑物から大きな誘惑物へ、そして興奮状態での実践へと進むことで、犬はどんな状況でも飼い主の指示に従えるようになります。各段階で成功体験を積み重ね、犬との信頼関係を深めることが、この訓練の成功の秘訣です。
◆ドッグランや外部環境での実践
~リアルな場面での応用力を育てる~
ドッグランや公園といった外部環境では、犬にとっての誘惑物(他の犬、匂い、音など)が急増します。この段階での「おいで」の訓練は、より実践的であり、犬がどのように学んだスキルを活用するかを試す重要なステップです。
~外部環境でトレーニングをおこなうための注意点~
1. 初めはリードをつけたままで練習
完全に自由にする前に、リードやロングリードをつけた状態で指示を試すことが推奨されます。これにより、万が一犬が興奮して他の犬や刺激物に向かおうとした場合でも、飼い主がコントロールできます。
2. 誘惑物に順応させる
初めての外部環境では、強い誘惑物が一度に多く存在するため、犬の集中力が散漫になりがちです。犬がその環境に少しずつ慣れるよう、短時間のトレーニングから始めて成功体験を重ねます。
3. 他の犬との接触を安全に管理
他の犬が近くにいる場合、突然のトラブルを避けるため、飼い主が犬同士の距離や状況をしっかり観察することが必要です。特に、他の犬が遊びに夢中で興奮している場合は、距離を保つか、リードで安全を確保します。
4. 褒めるタイミングを工夫
外部環境では、「おいで」が成功したときに、特別なおやつや遊び道具を用意することで、犬が成功の喜びを強く感じられるようにします。
◆成功体験を積み重ねる重要性
~「できた」という感覚が犬を成長させる~
犬に「おいで」を教えるうえで、最も重要なのは成功体験を積み重ねることです。成功体験を繰り返すことで、犬は「おいで」という指示に従うことを楽しいものと認識し、自発的に行動するようになります。
~トレーニングにおける成功体験の具体的な与え方~
1. 指示が必ず成功する状況を作る
初めは簡単な環境で練習し、犬が100%成功できる状態を整えます。例えば、室内や安全な囲いのある場所での練習から始めます。
2. 成功のたびにポジティブな強化を行う
成功時には犬が喜ぶおやつや遊び道具を与え、特別な行動として記憶させます。この報酬は最初は頻繁に与え、徐々に減らしていきます。
3. 失敗を減らす工夫
失敗が続くと、犬は「おいで」の指示が重要ではないと誤解する可能性があります。そのため、犬が指示に従わない場面では無理に呼び続けず、適切なタイミングで再挑戦します。
4. 犬の進歩を観察し、適切なタイミングで環境を変える
成功が繰り返されるようになったら、次の段階として外部環境や誘惑物を少しずつ加え、挑戦のレベルを上げていきます。
◆ 訓練の成果と限界
~犬ごとに異なる学習ペースを理解する~
30日間の訓練を通じて、多くの犬が「おいで」を一定のレベルで習得することができます。しかし、犬の性格や経験、環境によって学習速度や成果には大きな違いがあります。
~トレーニングにおける成果が見られるポイント~
1. 指示に従う頻度が増加
初期段階ではおやつや遊び道具が必要だった「おいで」の指示が、徐々においでの指示と褒め言葉だけでも効果を発揮するようになります。
2. 外部環境での安定した反応
ドッグランや散歩中、他の犬や誘惑物がある状況でも、指示に従うケースが増えます。
~トレーニングにおける限界への理解と対応~
1. 犬ごとの特性を尊重する
すべての犬が同じスピードで学習するわけではありません。興奮しやすい犬、慎重な犬など、それぞれの性格に合わせた練習が必要です。
2. 無理な目標設定を避ける
短期間で完全なスキルを求めるのではなく、徐々に成果を積み上げていくアプローチを心がけます。
3. 飼い主の一貫性が鍵
飼い主が一貫した態度で練習を行うことが、犬にとっての安定感を生み出します。
◆ 今後のアプローチ ~訓練を日常生活に活かす~
訓練は30日間で終了するものではありません。犬との信頼関係を築くためには、日々の練習を続けることが不可欠です。
~トレーニングをいかに日常生活で実践するか?応用すること~
1. 散歩の時間を活用する
散歩中に突然「おいで」を試し、日常の動作に組み込むことで、スキルを実践的に活用します。
2. 定期的な復習を行う
基本的なスキルを忘れないよう、定期的に短いトレーニングを設けます。
3. 新しい環境で挑戦する
犬が慣れた環境での練習に成功したら、他の場所や状況でも挑戦を繰り返し、応用力を高めます。
~トレーニングポイント~
ドッグランや外部環境での訓練は、実践的な応用力を高める重要なステップです。同時に、成功体験を積み重ねることで、犬は「おいで」の指示をポジティブに受け入れるようになります。30日間の訓練で基礎を築き、その後も継続して練習を行うことで、飼い主と犬との信頼関係はさらに強化されていくでしょう。
◆今回の記事のまとめ 【犬に「おいで」を教える極意 ~成功の積み重ねが信頼を築く~】
犬との生活は、日々の小さな挑戦と喜びの積み重ねです。「おいで」を教えることは、単に飼い主の元へ犬を呼び戻す技術を学ぶだけではありません。それは、愛犬と飼い主が互いを理解し、信頼し合うためのかけがえのないプロセスです。
最初は思うようにいかないこともあるかもしれません。誘惑物に負けたり、失敗することもあります。しかし、その過程こそが愛犬との関係をより深いものにしてくれます。一つひとつの成功体験が、犬にとっての自信となり、飼い主にとっても愛犬を信じる心の支えとなるでしょう。
訓練は一日で完璧にできるものではなく、継続して取り組むことで、少しずつ形になっていきます。愛犬と共に過ごす時間を楽しみながら、焦らず、根気よく練習を続けてください。その先にあるのは、困難な状況でも安心して頼れる愛犬との特別な絆です。
何よりも大切なのは、飼い主である皆さまが「楽しむこと」です。愛犬の成長を見守り、成功の瞬間を一緒に喜ぶ時間は、きっとかけがえのない思い出になります。愛犬との日々を通じて、「おいで」が成功した瞬間の感動や達成感を共有し、共に成長する喜びを感じてください。
最後に、皆さまと愛犬が一歩ずつ前に進むことで、さらに幸せな毎日を築けることを心より応援しています。愛犬との素晴らしい時間をどうぞ大切にしてください。
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