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2025年12月29日

TNRとは?&捕獲器の使い方 ― 素人でもできる捕獲器使用で簡単捕獲 ―

TNRや捕獲器について、「名前は聞いたことがあるけれど、よく分からない」「自分には関係ないことだと思っていた」

そんな方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、TNRの基本や捕獲器の使い方について、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

 

■本題の前に少し自己紹介

こんにちは✨

私は動物の専門学校を卒業し、現在はNPO法人ヴァリアスカラーズで、動物に関わる仕事をして約1年になります。

私自身幼い頃、家で動物を飼っていたわけではありません。それでも、動物の存在に自然と惹かれていました。

思い返してみると、そのきっかけは、友人の家にいたワンちゃんだったと思います。

つらい時や気持ちが沈んだ時、そのワンちゃんと過ごす時間に癒され、気持ちが少し軽くなることがありました。

それが、私にとって動物を「好きだ」と気づいた最初のきっかけでした。

動物と関わりたいという思いから、高校では農業系の学校に進み、畜産動物と触れ合いながら、命について学び命を育てること、そして命に責任を持つことの重さを、そこで実感しました。

その後、動物の専門学校で動物について学び、現在は現場で動物たちと向き合う立場になり、学ぶ側から、実際に命に関わる側になり、動物と向き合うことの難しさや、簡単に答えが出ない場面があることも知り現在に至ります。

このコラムは、私自身が現場で働きながら学んできたことをもとに、皆様と同じ目線で、TNRや捕獲器がどのような意味を持ち、どのように猫たちの命につながっているのかを、一緒に知っていただけたらという思いで書いています。

 

□コラム「TNRとは?&捕獲器の使い方 ― 素人でもできる捕獲器使用で簡単捕獲 ―」目次□

第一章:TNRとは?初心者にもわかる基本知識

第二章:捕獲は怖くない。初心者が知っておきたい考え方

第三章:捕獲器の基本と事前準備

第四章:初心者でもできる捕獲器の使い方【実践編】

第五章:捕獲後の流れと無理をしないTNR

 

第1章|TNRとは?初心者にもわかる基本知識

TNRの意味(Trap / Neuter / Return)

 

TNRとは、

Trap(捕獲)・Neuter(不妊去勢手術)・Return (元の場所へ戻す)

この3つの言葉の頭文字を取ったものです。

野外で暮らしている猫を一度捕獲し、不妊去勢手術を行い、その後、元いた場所へ戻す。

これがTNRの基本的な流れになります。

「捕まえて、手術をして、また戻す」という行為に、疑問を感じる方もいるかもしれません。

ですが、TNRは猫をどこかへ移動させたり、排除したりすることを目的とした活動ではありません。

猫がこれまで生きてきた環境を大きく変えずに、繁殖だけを止める。

そのことで、猫自身の負担や、地域で起きやすい問題を少しずつ減らしていく方法として行われています。

TNR(さくら耳)猫

 

■なぜTNRが必要なのか

野外で暮らす猫は、発情期ごとに繁殖を繰り返します。

その結果、数が増えすぎてしまい、十分なごはんが食べられなかったり、ケガや病気のリスクが高まったりすることがあります。

また、鳴き声やケンカ、糞尿などが原因で、地域とのトラブルにつながるケースも少なくありません。

こうした問題は、猫が悪いわけではなく、環境や状況によって生まれてしまうものです。

TNRは、そうした状況を根本から見直すための方法のひとつです。

不妊去勢手術によって繁殖を止めることで、これ以上増えてしまう命を防ぎ、

猫にとっても、人にとっても、負担の少ない状態を目指します。

「かわいそうだから何もしない」という選択が、結果的に猫を厳しい状況に置いてしまうこともあります。

TNRは、目の前の命と、これから生まれてくる命の両方を考えた取り組みです。

 

■地域猫と人が共に暮らすために

TNRは、猫だけのための活動ではありません。

地域で暮らす人と猫が、無理のない形で共存していくための考え方でもあります。

不妊去勢手術を受けた猫は、発情による鳴き声やケンカが減ることが多く、

地域で起きやすいトラブルの軽減につながる場合があります。

その結果、猫の存在をめぐる対立が和らぐこともあります。

大切なのは、「猫をどうにかする」のではなく、「今、そこに生きている猫とどう向き合うか」を考えることです。

 

 

第1章を書きながら、改めて感じたのは、TNRは言葉で説明するほど簡単なものではない、ということです。

実際に現場では、野良猫による近所トラブルについての電話が入ることも少なくありません。

猫の鳴き声や糞尿の問題などから、猫の存在そのものをよく思わない方がいるのも事実です。

そうした状況の中で、TNRを進めようとしても、

「その地域に猫がいること自体が嫌だ」という声にぶつかることがあります。

猫のために何かをしたいと思っても、周囲との調整が必要になり、

思うように進まないことも多く、難しさを感じる場面はたくさんあります。

それでも、人と猫のどちらかを否定するのではなく、

どうすれば無理のない形で共存できるのかを考え続けることが大切だと感じています。

TNRは、そのためのひとつの手段であり、正解を押しつけるものではありません。

だからこそ、現場では悩みながら、考えながら向き合っています。

 

第2章|捕獲は怖くない。初心者が知っておきたい考え方

 

■「かわいそう」「失敗しそう」という不安

「捕獲」と聞くと、かわいそう、怖い、失敗したらどうしよう。

そんな不安を感じるのは、とても自然なことだと思います。

実際に現場でも、捕獲に対して強い不安を感じる方は少なくありません。

「本当に自分に捕まえられるのか」「うまくいかなかったらどうしよう」と、

経験がないことへの不安から、一歩踏み出せずに悩まれる声も多く聞きます。

捕獲は、慣れていないとハードルが高く感じやすい行為です。

さまざまな気持ちが重なって、不安になるのも無理はありません。

 

■捕獲器を使う理由とメリット

捕獲器を使う一番の理由は、猫にも人にも負担が少ない方法だからです。

手で追いかけたり、無理に抱えようとすると、

猫に強い恐怖を与えてしまったり、人がケガをしてしまう危険もあります。

捕獲器は、猫の行動を利用して捕獲する仕組みになっており、

正しく使えば、必要以上に猫を追い詰めることはありません。

また、捕獲器を使うことで、手術につなげるための確実な捕獲ができるというメリットもあります。

TNRを行ううえで、捕獲器は大切な役割を持つ道具のひとつです。

 

■正しい方法なら猫にも人にも安全

捕獲器は、使い方を誤ると危険な道具になってしまいます。

ですが、事前に準備をし、正しい方法を守ることで、猫にも人にも安全に使うことができます。

大切なのは、焦らず、無理をしないことです。

捕獲がうまくいかない場合や、不安が大きい場合は、一人で抱え込まず、周囲や団体に相談することも必要です。

当団体では、捕獲器の貸し出しや、捕獲に関するご相談を無料で承っています。

「何から始めればいいのか不安」そんな段階でも、気軽に相談していただけたらと思います。

Wild_cat_in_trap

 

第3章|捕獲器の基本と事前準備

 

■捕獲器の仕組みと種類

TNRで使われる捕獲器の多くは、箱型の捕獲器です。

エサにつられて中に入った猫が、奥に進むことで扉が閉まる仕組みになっています。

このタイプの捕獲器は、猫が自分から入る構造のため、

無理に追いかける必要がなく、比較的安全に捕獲できるのが特徴です。

捕獲器にはいくつか種類がありますが、

初心者の方には、構造がシンプルで実績のある箱型捕獲器が使われることが多いです。

 

■初心者に向いている捕獲器

初めて捕獲器を使う場合は、

・扱い方が分かりやすい

・設置や回収がしやすい

・安全に使える

といった点を重視することが大切です。

複雑な仕組みのものよりも、

基本的な箱型捕獲器を正しく使う方が、失敗やトラブルを防ぎやすくなります。

また、捕獲器のサイズや状態も重要です。扉の動きが悪くないか、歪みがないかなど、

使用前に必ず確認しておく必要があります。

 

■捕獲前に必ず準備しておくこと

捕獲は、いきなり始めるものではありません。事前の準備がとても重要です。

まず、不妊去勢手術を行う病院や日程をあらかじめ決めておくこと。

捕獲できたあと、すぐに対応できる体制を整えておく必要があります。

また、捕獲を行う場所や時間帯についても考えておくことが大切です。

人通りが多い場所や、周囲に説明が必要な場合は、事前に配慮しておくことでトラブルを防ぐことができます。

さらに、捕獲器に慣らしておくことも大切な準備のひとつです。

事前にエサだけを置き、捕獲器の存在に慣れてもらうことで、猫が警戒せずに中に入ってくれる可能性が高まります。

捕獲器は猫にとって見慣れない物だからこそ、焦らず様子を見ながら準備を進めることが大切です。

牙をむき出しにして威嚇している1匹の野良猫

 

第4章|初心者でもできる捕獲器の使い方

 

■設置場所の選び方

捕獲器を設置する場所は、猫が普段よく通る場所や、エサを食べに来ている場所を選ぶことが基本です。

人の出入りが多すぎる場所や、車通りの多い場所は避け、

猫が落ち着いて行動できる環境を意識することが大切です。

また、雨や直射日光を避けられる場所を選ぶことで、猫への負担を減らすことにもつながります。

※ただし、自らの土地内でなければ十分に周辺にお住まいの方々やその地域での許可を得る努力もするべきです。

Street cats eating outdoor

 

■エサの置き方とタイミング

捕獲器の中に置くエサは、猫が好むニオイの強いものを選ぶと入りやすくなります。

エサは、捕獲器の奥に置くことで、

猫がしっかり中まで入るように誘導します。

手前に置きすぎると、扉が閉まらないまま食べられてしまうこともあります。

捕獲を行う時間帯は、猫の行動が落ち着いている時間を選ぶことがポイントです。

無理に急がず、猫の様子を見ながら進めます。

 

■捕獲成功率を上げるコツ

捕獲で一番大切なのは、焦らないことです。

うまくいかない日があっても、それは珍しいことではありません。

捕獲器を設置したあとは、

頻繁にのぞきすぎず、適度な距離を保つことも大切です。

人の気配が強すぎると、猫が警戒して近づかなくなることがあります。

 

第4章を書きながら、捕獲は「特別な技術」よりも、

準備や落ち着いて向き合う姿勢が大切なのだと改めて感じました。

実際には、猫の行動をよく見て、無理をしないことが、結果的に一番の近道になる場面が多くあります。

うまくいかない日があっても、それは失敗ではなく、

猫の様子を知るための大切な過程だと感じています。

焦らず、猫のペースを尊重することが、人にも猫にも負担の少ない捕獲につながっていきます。

捕獲は完璧にやるものではなく、できる範囲で、丁寧に向き合うことが大切なのだと、書きながら改めて考えさせられました

 

第5章|捕獲後の流れと無理をしないTNR

 

■捕獲できた直後にすること

捕獲ができたら、まずは猫を落ち着かせることが大切です。

捕獲器の上から布やタオルをかけ、外の刺激をできるだけ遮ります。

視界を暗くすることで、猫の不安を和らげることができます。

捕獲直後は、猫も強い緊張状態にあります。

無理に声をかけたり、捕獲器を動かしすぎたりせず、静かな環境を保つことを意識します。

 

■移動・手術・リターンまでの流れ

捕獲後は、事前に決めておいた病院や団体の指示に従って移動します。

移動中も、捕獲器に布をかけたままにし、

猫が落ち着いた状態を保てるよう配慮します。

不妊去勢手術が終わったあとは、

体調や回復の様子を確認しながら、元いた場所へ戻します。

これがTNRの「R(Return)」にあたる部分です。

リターンのタイミングや方法については、猫の状態や病院の指示を優先し、無理のない判断が必要です。

 

▼実際のTNR活動の様子はこちら▼

 

 

 

■最後に──

TNRや捕獲器については、知れば知るほど簡単には割り切れないと感じることも多いと思います。

大切なのは、今そこに生きている猫の存在を前提に、人と猫が無理なく関われる方法を考え続けることだと思っています。

TNRや捕獲器は、そのための選択肢のひとつです。

このコラムでは、

現場で働く一人として、私自身が学びながら感じてきたことをまとめてきました。

「こうしなければならない」という正解があるわけではありません。

TNRを知るきっかけや、捕獲への不安を少し軽くする材料になれば幸いです。

できる範囲で、できる形で、

それぞれの立場から命と向き合っていくことが、未来につながっていくと感じています。

 

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