地域猫を見かけたとき、「ごはんをあげたほうがいいのかな」「何もしないほうがいいのかな」
そんなふうに迷ったことはありませんか。
このコラムは、地域猫と関わる中で生まれるその“迷い”から、現場で起きている現実までを、順番にお伝えします。
■本題の前に少し自己紹介
こんにちは✨
私は動物の専門学校を卒業し、現在はNPO法人ヴァリアスカラーズで、動物に関わる仕事をして約1年になります。
私自身幼い頃、家で動物を飼っていたわけではありません。それでも、動物の存在に自然と惹かれていました。
思い返してみると、そのきっかけは、友人の家にいたワンちゃんだったと思います。
つらい時や気持ちが沈んだ時、そのワンちゃんと過ごす時間に癒され、気持ちが少し軽くなることがありました。
それが、私にとって動物を「好きだ」と気づいた最初のきっかけでした。
動物と関わりたいという思いから、高校では農業系の学校に進み、畜産動物と触れ合いながら、命について学び命を育てること
そして命に責任を持つことの重さを、そこで実感しました。
その後、動物の専門学校で動物について学び、現在は現場で動物たちと向き合う立場になり、学ぶ側から、
実際に命に関わる側になり動物と向き合うことの難しさや、簡単に答えが出ない場面があることも知り現在に至ります。
このコラムは、私自身が現場で働きながら学んできたことをもとに、皆様と同じ目線で
地域猫と関わるときに生まれる迷いや現実について、一緒に知っていただけたらという思いで書いています。
□コラム「地域猫と関わるときの迷いと向き合い方」□目次
第一章:ごはんをあげるべきか、あげないべきか
第二章:善意だけでは、うまくいかないことがある
第三章:地域猫活動という考え方
第四章:それでも、地域の中だけでは抱えきれない命
第五章:そのとき、誰が引き受けているのか
第六章:現場を支えるためにできること
第一章|ごはんをあげるべきか、あげないべきか
地域猫を前にしたとき、多くの人が最初に感じるのは「かわいそう」という気持ちではないでしょうか。
お腹をすかせているように見える。寒い日や雨の日、じっと動かずにいる姿を見ると、
ごはんをあげたほうがいいのでは、と自然に思ってしまいます。
一方で、「ごはんをあげると増えるって聞いた」「近所の人に何か言われたらどうしよう」
そんな不安が頭をよぎることもあります。
あげるのが正しいのか、あげないのが正しいのか。誰かに聞いても、はっきりした答えが返ってこない。
地域猫に関わる多くの人が、ここで一度立ち止まります。
実際のところ、ごはんをあげること自体が、悪いわけではありません。生きている以上、食べることは必要です。
ごはんがあるからこそ、命がつながっている猫もいます。けれど同時に、ごはんのあげ方次第でトラブルが生まれてしまうのも事実です。
決まった時間や場所を守らない餌やり。食べ残しや容器の放置。それによって、糞尿や鳴き声、繁殖の問題が目立つようになると、
「猫がいること自体が迷惑だ」と感じる人が出てきてしまいます。
その結果、猫のことを思って始めた行動が、かえって猫の立場を悪くしてしまうこともあります。
だからこそ、地域猫に関わるときには「気持ち」だけでなく、周囲との関係や、地域全体の状況を考える視点が必要になります。
ごはんをあげるか、あげないか。
この問いに、ひとつの正解はありません。
大切なのは、「どうすれば猫と人が、同じ地域で暮らし続けられるのか」その視点を持つことです。

第二章|善意だけでは、うまくいかないことがある
地域猫に関わるきっかけは、多くの場合、とても身近なところにあります。
近所で猫を見かけるようになった。いつも同じ場所にいることに気づいた。
そんな小さなきっかけから、
少しずつ関心を持つようになる人も少なくありません。
ごはんをあげる人もいます。様子を見るだけの人もいます。関わり方は、人それぞれです。
その善意によって、守られている命があるのは確かです。
一方で、地域猫活動は善意だけで成り立つものではありません。
地域猫とは、不妊・去勢手術を受け、これ以上増えないよう配慮されたうえで、地域の中で見守られている猫のことを指します。
その前提があるからこそ、日々の関わり方にも、一定の考え方やルールが必要になります。
たとえば、餌やりです。時間や場所が定まらないまま行われると、猫の行動が安定せず、
状況の把握が難しくなることがあります。
また、複数の人がそれぞれの判断で関わることで、「誰が、どこまで見ているのか」が分かりにくくなり、
体調の変化や異変に気づいても、判断が遅れてしまう場合もあります。
善意が重なっているはずなのに、全体としては状況が見えにくくなる。
これは、地域猫に関わる現場で実際によく起きていることです。
さらに、地域猫活動では、猫が地域で暮らし続けることを前提としているため、
健康状態や年齢の変化にも継続的に向き合う必要があります。
こうした判断を、一人ひとりの善意に任せ続けることには、どうしても限界が生じます。善意は、活動の出発点です。
けれど、善意だけでは長い時間、安定して続けていくことは難しい。
地域猫活動は、その現実を踏まえたうえで、不妊・去勢手術を軸に、関わり方を整理してきた取り組みだと言えます。

第二章を書いてみて
地域猫について考えるとき、善意が出発点になることは、とても自然なことだと感じます。
一方で、その善意だけに頼り続けることの難しさも、現場では確かに存在しています。
この章では、誰かを責めたり、正解を示したりするのではなく、地域猫活動が
なぜ「仕組み」や「ルール」を必要としてきたのかを、事実として整理することを意識しました。
地域猫と関わる中で生まれる迷いは、特別なものではありません。多くの人が、同じところで立ち止まってきたのだと思います。
このコラムを通して、地域猫活動を「感情」だけでなく、現実的な取り組みとして知っていただけたらと考えています。
第三章|地域猫活動という考え方
地域猫活動とは、飼い主のいない猫を、そのまま増やし続けるのでも、
排除するのでもなく、地域の中で管理しながら共に暮らしていくための取り組みです。
この活動の中心にあるのが、TNRと呼ばれる考え方です。
TNRとは、猫を捕獲し(Trap)、不妊・去勢手術を行い(Neuter)、元の場所に戻す(Return)
という一連の流れを指します。
不妊・去勢手術を行う目的は、猫を減らすことではありません。これ以上増えないようにすること、
そして、地域の中で安定した状態をつくることです。
手術を受けた猫の多くには、耳先に小さなカットが入っています。
いわゆる「さくら耳」と呼ばれるものです。
これは、その猫がすでに手術を終えていることを外から見て分かるようにするための目印であり、
ケガや虐待によるものではありません。
地域猫として見守られている猫は、このように繁殖を止めたうえで、地域の中で暮らし続けることを前提としています。
そのため、地域猫活動では、不妊・去勢手術だけでなく、日々の関わり方も重要になります。
餌やりは、時間や場所を決めて行うことが基本とされています。
食べ残しを放置しないことも、活動の一部として考えられています。また、トイレの設置や清掃など、
周囲の環境への配慮も欠かせません。これは猫のためだけでなく、地域で暮らす人同士の摩擦を減らすためでもあります。
地域猫活動は、猫が好きな人だけで完結するものではありません。猫が苦手な人や、
生活への影響を心配する人の存在も含めて、地域全体で理解を得ながら進められることが前提とされています。
そのため、地域猫活動は「誰でも自由に始められるもの」ではなく、一定のルールと合意のもとで行われる
管理された取り組みだと言えます
▼実際のTNR活動の様子はこちら▼
第四章|それでも、地域の中だけでは抱えきれない命
地域猫活動は、すべてのケースが地域の中だけで完結できるわけではありません。
たとえば、病気やケガです。外で暮らす猫は、ケンカや事故、感染症などのリスクを常に抱えています。
体調の変化に気づいても、地域で医療対応まで担うことが難しい場合もあります。
また、人に慣れていない猫もいます。捕獲や治療が必要な状態であっても、近づくこと自体が難しく、
対応に時間や専門性が求められることがあります。高齢になった地域猫も、次第に増えていきます。
年齢を重ねるにつれて、食事の管理や体調の見守りが必要になり、屋外での生活が負担になるケースも少なくありません。
さらに、地域猫活動が行われていない場所や、対応が追いつかなかった地域では、子猫が生まれてしまうこともあります。
生まれたばかりの子猫は、地域での見守りだけでは命をつなぐことが難しい場合が多く、保護や飼育が必要になります。
このように、地域猫活動が機能していても、病気、ケガ、高齢、子猫といった理由から、
地域の枠を超えた対応が必要になる場面は、現実として存在しています。
地域猫活動は、あくまで、人と猫が地域で共に暮らすための一つの仕組みです。

第四章を書いてみて地域猫活動について調べ、現場の声に触れるほど、「地域で見守る」という考え方が、
とても現実的な取り組みであることを感じました。同時に、どんなに仕組みが整っていても、
地域の中だけでは抱えきれない命が、確かに存在していることも見えてきました。
第四章で書いたのは、特別なケースではなく、実際に各地で起きていることです。
地域猫活動は万能ではありません。だからこそ、その外側で支えられている役割や存在についても、
知っておく必要があるのだと思います。
第五章|そのとき、誰が引き受けているのか
地域の中だけでは対応が難しくなったとき、その猫たちは、いくつかの受け皿に引き継がれていきます。
まず、多くの自治体には、動物愛護センターや保健所といった行政の窓口があります。
負傷した猫や、地域で対応できないケースについて、相談や引き取りが行われる場所です。
ただし、行政の施設には、収容できる数や期間に限りがあります。すべての猫を、十分な時間をかけて
個別にケアできる体制が整っているとは限りません。
そのため、行政だけですべてを引き受けることは難しく、現実には、対応が分散されています。
その一部を担っているのが、民間の動物保護施設や保護団体です。民間の保護施設では、
病気やケガの治療が必要な猫、人に慣れていない猫、高齢や持病を抱えた猫など、地域や行政では対応が難しいケースを
引き受けることがあります。また、子猫の場合は、一時的な保護や育成が必要になることも多く、
人の手による継続的な世話が欠かせません。
こうした役割分担は、明確に線引きされているわけではなく、
状況に応じて、行政、地域、民間の保護施設がそれぞれ対応しているのが実情です。
つまり、地域猫活動の外側には、目に見えにくい形で命を引き受けている場所が存在しています。
それらの場所は、地域猫活動と対立するものではなく、地域だけでは支えきれない部分を補う役割を担っています。
地域猫活動が続いていくためにも、その先で支えられている仕組みや役割を知っておくことは、重要なことだと言えるでしょう。

第六章|現場を支えるためにできること
ここまで読んで、「じゃあ、自分はどう関わればよかったんだろう」そう感じた人もいるかもしれません。
地域猫と関わる中で生まれる迷いは、知識が足りなかったからでも、判断を誤ったからでもなく
多くの人が同じところで立ち止まっています。
地域猫活動は、本来は地域で完結させることを目指した取り組みです。一方で、どうしても地域だけでは抱えきれなくなる場面
があることも、前の章で見てきました。そのとき、すべてを自分で引き受ける必要はありません。
直接関わり続ける以外にも、関わり方はあります。役割を知り、無理のない形で関わり続けること。
それもまた、現場を支えるためにできる大切な関わり方です。
寄付は、気持ちを示すための行動というより、地域で完結しなかった現実を次につなぐための一つの選択肢です。
知ったうえで選ぶ。抱え込まず、つなぐ。その積み重ねが、現場を支えることにつながっていきます。
【~ご支援・ご協力のお願い~】
私たちヴァリアスカラーズは、こうした現実に向き合いながら、行き場を失った犬や猫の命を守り、新しい家族へつなげる活動を続けています。
しかし、この活動は私たちだけの力では続けられません。医療費や食費、施設維持費など、どれも命を守るために欠かせないものですが、日々大きな負担となっています。
もしこの記事を読み、「犬や猫の未来を守りたい」と少しでも感じていただけたなら、どうか私たちの活動を応援してください。
ご寄付は、一頭でも多くの命を救うための医療や生活費に大切に使わせていただきます。私たちの目指すのは、どの命も最後まで愛され、安心して暮らせる社会です。その実現には、あなたの力が必要です。小さな一歩が、大きな命の支えになります。
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